ラチェット構造について

今回はハブのラチェット構造について書きたいと思います。

皆さんはハブを選ぶ時ラチェット構造について気にしていますか?何をもって良いラチェットと思いますか?ノッチ数が多いから良い?そもそも気にしたこともない人も多いかもしれません。ハブによってはフリーボディをはずしてもラチェットが見えないものもあり、内部を見たことがない人も多いと思います。そもそも分解したこともないという人も多いかもしれません。というわけで、今回は代表的なラチェット構造の解説とメリットデメリットについて書こうと思います。メカに詳しくない人にはやや難しい内容かもしれません。

代表的なラチェット構造は主に3種類です。

①サイレントボールラチェット機構

主に内装変速機に使われている方式です。
以下の図のような構造でボールが矢印の方向にスプリングで軽く押し付けられています。

フリーボディが回転すると角度が付いた斜面がボールにあたり、トルクが伝わる仕組みになっています。逆回転するときは斜面からボールが離れる側に力がかかり空転します。

空転するときにボールがノッチを飛び越える仕組みではないのでフリー独特のラチェット音がないのが本方式の特徴で、さらにボールが斜面に座り続けるため、漕ぎ出したら即座にトルクがかかり無限ノッチとなることも特徴の1つです。

本方式は通常のラチャットではやかましすぎるため2重ラチェット構造を必要とする内装変速機には必須のメカニズムとなっています。

無限ノッチに無音フリー構造なんて最高のラチェットじゃないか!と一瞬思ってしまいますが、やはり弱点があります。

本方式最大のデメリットは駆動剛性が致命的に低くなってしまう点です。
そのためロードバイクやMTBにはまず使用されません。

以下の図のように斜面でボールが滑らないようにグリス潤滑された面を摩擦で止まるように斜度を決め、トラクションでトルクを伝える必要があるため、トルクに対して押し付け力が約10倍程度必要になり、フリーボディ体がたわむため駆動剛性が下がってしまいます。
とはいえ本当に良くできた機構で発明は100年以上前ということで驚くかぎりです。

②爪座ラチェット機構

みなさんおなじみの方式です。
日本のロードバイクはほとんどこの機構のハブになるようです。

爪が座っていて、バネで爪は上方に押し当てられ、トルクがかかると段差に爪が引っかかり伝達される仕組みです。

空転時には爪が段差上をぱたぱたと倒れて乗り越える仕組みとなっています。
ラチェット音についてメーカーによって違い、どこのメーカーの音が良いと議論されたりもしますが、この音まで設計しているメーカーはないのでラチェット音については偶然の産物です。

先ほどのサイレントボールラチェットより何が優れているかというと、ずばり駆動剛性です。以下の図のように、先ほどよりも角度がつくために余計な押し付け力が小さくなるため、たわみが小さくなり駆動剛性が上がります。

 

③ランニングフェースラチェット機構

最後はやはりスターラチェットですね。メカニズムの本によるとランニングフェースラチェットと呼びます。
円周方向にすりばち状に溝が切られたフリーがスプリングで押し付けられ、トルクがかかると直結する機構です。空転時はすり鉢の溝を超えて空転します。


本方式の特徴は余計な角度がつかず、多数の溝が噛み合い直結する点で駆動剛性、耐久性が最も高くなる点です。耐久性が高いため軽量化も他のラチェットよりもでき、最近では様々なメーカーが採用してきています。現状では最高のラチェット機構と言えます。Bicycle club 2017年4月号での駆動剛性測定実験では爪座ラチェット方式に対して、本方式では30%ほど駆動剛性が高い傾向が得られました。