Study of crank3

今回はクランク軸についてです。

今回のコラム簡単な内容ではありますが今までこういう内容を書いた人があまりいないのとクランク軸の事を書いておきたかったので書くことにしました。
 

ところで皆さんクランクは右と左で剛性が違うことはご存知でしょうか?

自転車に乗っていて左クランクのほうが柔らかいことにはお気づきですか?

いつも同じクランクを使っていると気のせいかなと思ってしまったり、利き足の方が踏めるためにフィーリングが左右で異なり生じる違和感と剛性が混在して確信が持てなかったりします。

ですがクランクを別な物に変えたときは剛性の違いがはっきり分かったりするものです。

 

さてなぜ左クランクが柔らかいかと言いますと以下の図ようにトルクの経路が右クランクよりも左クランクがクランク軸分長いためたわみが大きくなるためです。

クランク軸のねじれ角度の計算は材料力学の本に公式が載っていますので簡単です。

この式は簡単ですね。掛け算割り算ですのでそれぞれの係数に対して線形依存する事が分かります。

中空丸パイプ部材の断面二次極モーメントは以下の式を使います。

この係数は形状効果が剛性に与える指数となります。

断面二次極モーメントはパイプの内径と外径の4乗に依存します。

つまり軸の外径が増えると4乗に比例して軸のねじり剛性が高まることになります。ただし外径を増やせば重量が増しますし、内径が増えれば4乗で剛性を下げる方向に働きます。外径が増しても重量が常に同じになるように内径を調整しないと比較になりません。というわけで重量を同じにしつつ、材質をアルミと鉄、軸径を変化させたときに剛性がどのように変化するか検討したグラフが以下になります。横軸がクランク軸の径。縦軸が軸のねじれ角度です。軸径20mm~50mmまで計算しています。横軸の値が低いほどたわみが少なく高剛性です。良くあるBB規格の軸径24mmと30mmも含めてあります。


いずれの軸径でもアルミよりも鉄の方が硬い結果となりました。

24mm軸で鉄軸が多いのはこのためでアルミよりも鉄軸の方がねじり剛性が約20%高いのです。また30mm軸径のねじり剛性は24mm軸径よりも同じ重量で剛性が約40%向上する結果となりました。30mm軸では鉄軸とアルミ軸の差は約12%ほどとなりますが24mm軸と比べるとアルミ軸でも剛性が高いと言えます。計算では24mm軸でスプリントをした時に左クランクは右クランクよりもペダル位置で4~6mmほど多くたわんでいます。

ここまでたわむとスプリント時に力が逃げ駆動ロスが生じてしまうため無視できなくなってきます。

よってクランク軸を大径化して左クランクの剛性を高めようというのは剛性だけを見れば正論であろうという事になります。

ですが実際にはBBの出来・抵抗・重量、フレーム剛性、BB互換性による運用のし易さ等様々な背景から大径化がなかなか進まないのが現状です。

 

「Crank stiffness」でネット調べてみると実際のクランクで実測したデータがでてきます。ほとんどのクランクが右クランクに対して左クランクが1.5倍も剛性が低く、柔らかいクランクだと2倍近く剛性が低いというものもあります。剛性の高いクランクを探して試してみては如何でしょうか?

 

今回のコラムはねじり剛性だけに焦点をあてて書いてみましたが実際のクランク軸の設計は結構大変です。一見簡単そうな軸の設計ですが量産を考慮して図面を書くと書き込む隙間もないほどびっしりと書き込みが必要で真っ黒な図面となります。たかがクランク軸、されどクランク軸、こだわって作るとノウハウ満載になります。