ホイールの真実3(解説編)

今回はスポークをキンキンに張った時にホイールがどういう状態になるのか解説します。
前回のコラムでスポークテンションが低いとホイールが負荷を受けた時にスポークテンションがゼロになり、スポークがプラプラとなり構造として機能しなくなるため剛性ががた落ちすると解説しましたが、ではスポークテンションをどんどん上げて行くとホイールはどうなるのか興味が沸いてきます。

さてここからが今回の本題ですが、まずは簡単な物理法則のおさらいからはじめます。ここに1本の柱があるとします、スポークでも良いですし、割り箸でも良いのでイメージして下さい。

この柱にテンションがかかっていたとします。

ここで、この柱に横力を負荷した時、テンションがある時とない時で横剛性はどちらが高くなるでしょうか?

スポークと同様に当然テンションがかかっている方が横剛性は上がりますよね。
これは以下の図のようにテンションにより復元力が発生するためです。

では逆にテンションでなく圧縮力が柱にかかっている場合、横剛性はどうなるでしょうか?

テンションとは逆に横剛性が下がりますよね。機械の世界ではこれを座屈と言います。

基本的な物理現象を確認できましたので、次にホイールにかかる負荷を考えていきます。例えば以下の図のようにホイールを固定してスポークに横力をかけた場合、ご存知の通り、スポークテンションが高いほど横剛性が上がります。

ですが、実際にスポークに直に横力がかかることはありません。
実際には以下のようにタイヤに横力がかかりますよね。

加えて、前回のコラムより、ホイールに横力が加わった時にスポークは左右のスポークテンションを張ったり、緩んだりして力のバランスのやりとりをしているだけなのです。ですのでスポークは引張りでしか荷重を受けていません。

つまりスポークの横剛性とホイールの横剛性は全くの無関係となります。

話は変わって、ここでホイールの内力を考えます。
ホイールには以下のように内向きのテンションが加わっています。
この時、リムにはどうのよう力がかかっているでしょうか?

リムの一部をカットして力の釣り合いを考えると、以下の図のようになります。
リムがクサビ状の壁に挟まれ、スポークがリムを引張っている状態です。
力学的にこれが円周上に何個も配置されてホイールが形成されています。

この時、リムにはスポークによる引張りとクサビの壁により以下のような圧縮力を受けます。

今回はじめに解説したとおり、圧縮力を受けた柱は横力に対してどうなるのでしたでしょうか?
圧縮力により横剛性が下がるんでしたよね?

つまり、以下のように荷重を受けた時、スポークテンションを上げれば上げるほど、横剛性が下がるのです。この時、体重による縦荷重もリムにとっては横から押されているのと同じなので、ホイールとして縦剛性も下がります。

加えてスポークテンションをキンキンまで上げるとスポークの応力が高まるのでスポーク疲労寿命を下げることになります。スポークテンションは負荷によりテンションがゼロにならない程度の適切なテンションにすることがホイール剛性・寿命にとって最も良いことになります。

実際にはニップル緩みを防止するために最大負荷がかかった時にスポークテンションが10kgf程度は残っているくらいのテンションにするのがベストとなります。

今回の現象、なかなか体感しにくい現象です。
なぜなら圧縮力を受けた物体は座屈しやすくなり、横剛性が下がりますが、リムの圧縮剛性がかなり高いため、さほど剛性が下がらないためです。ですが、スポークテンションをキンキンに上げてもホイール剛性は上がらないというのはご理解頂ければと思います。

ホイールコラム編まだ続きます。次回お楽しみに!