ホイールの回転有無の空力的影響

今回は風洞試験においてホイールが回転している時とホイールが回転していない時の抵抗の差についてです。

風洞試験では以下の動画のようにホイールを回転させていますが、この回転を止めると空気抵抗にどのような差がでるか考えてみましょう。

 

以下の図のように、ホイールのハブより上は風に向かう方向に進み、風との相対速度はハブより上になるに従い相対速度は増してい行きます。風速48km/hの時は車輪速度も48km/hです。それによりホイール頂点位置で最大相対速度は96km/hとなります。反対にホイールのハブより下の部分では車輪は風を追いかける方向に進み、風との相対速度はハブより下になるに従い相対速度が減っていきます。ホイール下端位置で風との相対速度は0km/hとなります。またハブ中心位置ではホイールは風に向かいもしなければ追いもしませんので相対速度は48km/hとなります。

 


このように考えてみるとホイールが回転している時としていない時では空力的にはまったく違う現象が起きていると考えられます。このあたりを根拠に目に見えない空気の流れを複雑に考え過ぎてしまう事が多いようです。ちなみにこの図の出典はまたしてもCycling Scienceからです。

というわけで以下にホイールの回転有無の違いの風洞試験のデータを公開します。

回転ありで15.7ワット、回転なしで14.2ワットと抵抗の差は1.5ワットとなりました。ホイール抵抗のおよそ1割ですね。回転の有無で大きな差があるのではないかと考えられましたが意外と小さな差です。また横風を想定してホイールにヨー角をつけてデータを測定していますが、このデータ傾向も回転の有無で変わりませんでした。でもよくよく考えて見るとリムは突起のない円環形状ですから回転の影響があまりないことは予想できましたし、スポークはリムに対して細く数も少ないため回転による抵抗の増加量はこのくらいが妥当ではないでしょうか。

本結果より回転なしの風洞試験データであっても抵抗の低いホイールは回転ありでも良い結果を出す可能性が高い事がわかりました。ですので空気抵抗が低いリムを流体解析で求めるときには計算時間が長くなるホイールを回転しながらの解析ではなく、リム単体で回転をさせずに流体解析をして抵抗の低いリムを探すと実際の風洞試験でも良い結果がすばやく得られる事があります。

今回は理論と実験両方を書いてみましたが、これまで本実験結果を公開するメーカーがいないため理論だけで考えていましたが理論だけでは思い込みで色々と難しく考え過ぎていたと思います。理論に実験結果が結びつけられたことでなるほどこういうことか、実際の現象はシンプルで驚きがあるなと思っていただけたら幸いです。