ホイールの風洞試験とホイールにかかる力

今回はホイールの風洞試験についてです。

自転車の抵抗の80%は空気抵抗と言われるほど重要なエアロですが、エアロの研究は古くは1980年ごろから活発になっていきます。SACRAでの風洞実験は風速と車輪速度を時速48km/hにしてヨー角を2.5度おきにつけて実験を行っていますが、この時期の文献をもとに実験条件を決めています。以下の図は1990年のCycling Scienceからの抜粋ですが30年前の資料にも関わらずすでにホイールにヨー角をつけて横風の影響を見ようというのが見て取れます。ところでなぜ時速48km/hで実験を行うかというともともとロードレースの想定速度を25~35MPH(40~56km/h)としていたためで、色々な速度帯で実験をした結果その中間値である30MPH(48km/h)のデータを採用したことがはじまりのようです。その後いろんなホイールメーカーが追随したという経緯ですかね。

マイル基準で考えているあたりがアメリカ由来の技術だと思わせられますね。

この図の実験構成だとホイールのドラッグしか測定できないのですが、SACRAではホイールの6分力を測定しています。

以下の図のように6分力とは1つの物体にかけられる全ての力を示しています。

前後左右上下3つの軸とその軸周りの3モーメント(トルク)で6分力となります。

あらゆる荷重・トルクはこの6分力に分解することができ、また合成することができるという考え方です。

6分力以上の力はかかりようが無いため機械の中では最上位概念の1つと言えます。

ホイールで示すと以下のようになります。


これら全ての力を同時計測することでホイールにかかる全ての力を明らかにしています。今回はこれらのホイール6分力データを公開します。自転車関係のデータでこれを公開している組織を見たことがないので貴重なデータです。

すでに発表ずみですがまずはドラッグ(抗力)からです。
縦軸が荷重、横軸がホイールを傾けた時のヨー角です。
データはすべてホイール1本分のものです。
台座の抵抗データは除去済みです。
抗力の測定精度は±3[gf]で測定しています。

次にこの抗力周りのローリングモーメントです。


最大で0.2[Nm]ほどでローリングモーメントはさほど発生していないことがわかります。


次に横力です。


横力はヨー角をつけるほど大きくなり最大で850gfにも達しかなり大きいと分かります。またリムハイトが高いほど横力が高くなるため横風が吹いた時に自転車があおられるフィーリングと一致します。

次は横力周りのピッチングモーメントです。


こちらも最大0.2[Nm]ほどでさほど大きなトルクではありません。
車輪を空転させるためのトルクがデータとして乗っているようです。

次に揚力です。


わずかではありますが最大で-90[gf]ほどのダウンフォースが発生していることが分かりました。ホイールってダウンフォースが発生するんですね。揚力の測定精度は±15[gf]で測定していますのでデータがカクカクして見えます。

最後に揚力周りのヨーイングモーメントです。


こちらも最大で0.2[Nm]ほどでさほど自転車の挙動に影響はなさそうです。

今回は特に結論はありませんが、風洞試験時にはドラッグと横力以外にはさほど自転車の挙動に関わっていないことが分かりました。

少し驚いたのはホイールがわずかにダウンフォースを出していたことでしょうか。

本データの公開により皆さんのホイールへの理解がより深まればと思い今回のコラム掲載としました。